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第213話
庵では周がたっぷりの食材で美味しい食事を作ってくれており、薬を作り、配り終えた雪也も手伝っているようだ。店を閉めた蒼も加わって、温かな食事を囲む。そんな中、久しぶりに庵の外で馬の嘶きが聞こえた。
「……え?」
小食の雪也を気にして、あれこれ話しかけながら食べるよう促していた周が顔を上げる。どうやら皆の耳にも聞こえたのだろう、楽しそうに話していた口をつぐみ庵の扉に視線を向けた。
外はもう真っ暗だ。このような時間に誰だろうと、雪也は立ち上がって護身用の刀を握ると扉の方へ向かった。そっと音が鳴らないよう扉を僅かに開けて外を覗き見る。その瞳が馬から降りた人影を捕らえ、大きく目を見開いた。
「紫呉さま?」
ポツリと呟いて、大きく庵の扉を開く。雪也の声に由弦がパッと顔を輝かせながら扉の方へ駆け寄った。
「よ! 久しぶりだな。元気にしてたか?」
大きな風呂敷を持って紫呉が片手を上げる。久しぶりのその姿に由弦は飛びつかんばかりに喜んだが、雪也はほんの僅かにキョロキョロと周囲に視線を巡らせた。その視線に気づいた紫呉が由弦の頭を撫でながら雪也に視線を向ける。
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