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第214話

「今回は俺だけだ。弥生も優も来たがってたんだが、どうにも身動きが取れなくてな」  苦笑する紫呉に弥生と優を探したことを知られたと雪也は頬を赤く染めるが、紫呉は気にした風もなく由弦と雪也を促して庵の中へ入り扉を閉める。そして風呂敷を降ろしながら周たちにも軽く手を上げて挨拶した。 「よ! 悪いな、飯の途中で邪魔しちまって」  そう苦笑する紫呉であったが、蒼も湊も満面の笑みを浮かべて紫呉の来訪を喜んでおり、周はいそいそと茶碗を出してきて米をよそいだした。 「紫呉さん久しぶり! なんの前触れもなかったから驚いて固まっちゃった」 「由弦も嬉しそうだね~」  湊も蒼も箸をおいて紫呉に駆け寄り、あれこれと話しかける。それに笑いながら頷いて、ワシャワシャと髪を撫でていった。それにキャァキャァと騒いでいれば、そっと周が静かに近づいた。 「……食べる?」  口数少ない周なりの歓待に紫呉はニカッと笑って、周の髪も同じようにワシャワシャと撫でれば、蒼や湊のようにキャァキャァ言いこそしないものの、恥ずかしそうに頬を染めながら少し俯く。それが嫌がってのものではなく恥ずかしいだけだからとわかっている雪也は何も言わず、ニコニコとその様子を見守っていた。

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