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第215話

「これでも飛ばしてきたからな、もう腹ペコだ。周の飯も久しぶりだし、食って良いか?」  差し出された茶碗を受け取りながら紫呉が問えば、周はコクンと頷く。それに皆も紫呉から離れ、各々元の場所へ戻り食事を再開した。 「まだ弥生が帰ってこれなそうだったからよ、俺だけ一旦戻って来たんだ。弥生と優からも土産を預かってるし、後で渡すな」  よほどお腹が空いていたのだろう、かき込むように米を食べ一息ついてから紫呉は話し出す。どうやらまだ弥生が帰ってこられる目処はたっていないのだろう。ならば、弥生の護衛である紫呉もすぐに倖玖城へ引き返すことになる。それがわかって目に見えてションボリとした由弦に、紫呉は手を伸ばすと、ポンポンと頭を撫でた。 「悪いな。詳しくは言えねぇけど、こればっかりは将軍次第だからよ。でもよ、雪也が良ければ三日くらいなら滞在してきて良いって弥生から許可貰ってるから、そう落ち込むなって」  由弦を宥めながら、そういう事なんだが良いか? と雪也に尋ねる。紫呉の横で縋るように由弦も雪也に視線を向けた。そんな二人に雪也は微笑んで、迷うことなく頷く。

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