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第226話

 ピョンピョンと飛び跳ねるように遊びまわるサクラをチラチラと見ながら黙々と雑草を抜いて、由弦は滴る汗をグイッと首にかけていた手拭いで拭った。ずっとしゃがみ込んで縮こまった身体を解すように、グッと伸びをする。雑草を一か所に集めて、由弦は小さくため息をつくと空を見つめた。  このところ、由弦は自分の感情に振り回されるようになっていた。いつからかも、どうしてかも、確実なことは何もわからないけれど、それでもかつてのような清さはなくなり、嫌な人間になってしまったことだけはわかる。それが余計に嫌だった。  疲れたように地面へ腰を下ろした由弦に、サクラがトテトテと近づく。この敏い愛犬は由弦に寄り添うように身体をくっつけ、ただ静かに温もりを与えてくれた。 「なぁサクラ、やっぱ俺って最低だよなぁ」  昨夜、己が夜中に起きてどんな感情を抱いたのか、サクラは知っているのだろう。だからサクラは、雪也の頭を撫でようとした紫呉の手の下に頭を滑り込ませたのだ。それをありがたいと思う反面、自分の汚い感情をサクラに知られていると思うと胸が気持ち悪いほどに蠢く。

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