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第228話
(紫呉を独占したいなんて、子供すぎんだろ)
今でも充分に、紫呉は由弦を気にかけてくれるし、遊んでくれる。サクラだって楽しそうだ。それにどうしたって由弦よりも雪也や周の方が紫呉との付き合いが長いのだから、紫呉が彼らを気にかけ、彼らが紫呉に心許すのは当然のことで、何も不思議なことではないし紫呉が差別しているわけでもない。結局は、どこまでいっても由弦の我儘だ。我儘でしかない。
(なぁ、お師匠。俺って、こんなに欲張りだったっけ? それとも、慣れたから欲張りになったか?)
幼い由弦に生きることを教えてくれた、今は亡き面影に縋る。あの時から考えれば、随分と欲張りになったものだ。
師匠と一緒に生きて、師匠を見送ったら、サクラだけが家族だった。サクラさえいれば、それで良かった。サクラと一緒に居られるなら、どんなひもじい思いも耐えられるし、友達も何もいらないと、そう思っていたことに偽りはない。偽りはないはずだったのに、今もサクラはずっと傍にいるのに、それだけでは満足できない自分が奥深くから顔をのぞかせる。ましてその嫉妬を向ける先が、大恩ある雪也達だなんて、流石に笑えない。
「俺って最低だろ」
「そうなのか?」
ポツンと呟いた独り言に思わぬ返事があって、由弦は勢いよく振り返った。見ればそこには肩に背負った木の枝に鳥を括りつけた紫呉が不思議そうに由弦を見ながら立っていた。驚くあまり目を見開いたまま固まる由弦に、紫呉は軽く首を傾げながら近づく。
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