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第259話

「あの、こちらとしてはありがたいのですが、本当にその値でよろしいのですか?」  息子が困惑した声で問いかける。それもそうだろう。雪也が提示した値は一般的な薬の半分以下、老人が忌み嫌っている城下町の薬屋と比べれば実に六分の一ほどだ。日々の暮らしでいっぱいいっぱいの市民からすれば、確かに雪也の存在は救世主ともいえるだろう。だが、それで雪也は生活していけるのか? 「お代は一律です。決して相手を見て増やしたりしません。それが私の信条です。このお値段を頂戴できましたら、薬包を煎じてお届けいたします。確かに城下町の薬屋に比べれば値は安いですが、不純物を入れたりはしていませんから、値が安いからと言って薬として劣っているとは思いません。もっとも、それを判断されるのは私ではなくお客様自身ですから、私の薬に不信を抱かれたりした場合は、いつでも止めていただいて構いません。無理に押しかけて売りつけるというようなこともしませんから、そこはご安心ください」  嫌ならばそれで良い。雪也のその言葉は善人すぎるゆえか、薬に対する絶対的な自信ゆえか。おそらくは前者であろうと老人は見抜いて、小さく息をついた。

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