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第294話
身体を使い男に春をひさぐは、汚らわしい存在。その言葉はひどく鋭利で雪也をズタズタに切り裂くが、末子が特別に差別意識を持っているわけではないことを、雪也は知っていた。雪也を助けようと思った弥生の方が稀有なのだ。変わり者と言ってもいい。わかっていたからこそ、知られたくは無かった。隠し通したいと思った。
(だから、かな……)
雪也が何よりも恐れたから、こうして今、周にも、町の者達にも、知られてしまった。
これが報い……。
静かに諦め、末子の罵倒にも言葉一つ返さず耐えようとする雪也に、腕の中からスルリと抜け出た周が両手を広げ、その小さな身体で雪也を庇おうと前に立つ。その姿に、末子は鍋の蓋を投げようとしていた手をピタリと止め、雪也は目を見開いた。
「そこをどきなさいッ! そんな男娼を庇うなんてッ」
末子が周に怒鳴るのを見て、雪也は慌てて周の腕を掴んだ。自分の後ろに隠そうとするも、周は末子を睨みつけたまま動こうとしない。
ちゃんと食事を摂るようになり、周も大きくなった。もう、雪也の力でどうにかできるほど、小さくも軽くもない。
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