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第311話

 たぶん何かがあって、とても傷ついているだろうに、何でもないと口にして普段通りに振る舞う雪也が痛々しかった。そんな雪也を見て、見ないフリをすると言いながら苦しそうにしている周が可哀想だった。お互いを大切に思っているから、何も言わないという二人に由弦の胸が苦しくなる。きっとサクラも同じ思いなのだろうから、由弦の腕の中を飛び出して雪也の側に身体をくっつけに行ったのだ。 (紫呉、来てくんねぇかな)  本来であれば、雪也は大人であるからここまでこじれることは無かったのかもしれない。大人であるから、弱さを見せないというのもあるかもしれないが、周の気持ちに気づくことも出来ただろう。だが、雪也は大人であって大人ではない。子供のまま、時間が止まっているのだと弥生は言っていた。周や由弦を守るために必死になって雪也は大人であろうとしてくれているが、おそらく内面は周とそう変わらないのだろう。

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