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第348話
風の通る音しかしない静かな夜に、雪也は布団に横たわりながらも目を開いていた。耳には由弦や周、サクラと浩二郎の寝息が聞こえている。男には勘付かれないよう痛み止めに睡眠薬を混ぜたので寝ている間に何かされることも無いのだから雪也もいつもの薬を飲んで眠れば良いのだが、どうしてもそれが出来ず警戒するように起きている。
浩二郎が目を覚まして、雪也は失敗してしまった。彼が運び込まれたその瞬間から、どうにも怪しく、ともすれば近頃見かけるようになった過激な思想を持つ者かもしれないというのに、雪也は彼が周に手を伸ばした瞬間、無意識のうちに浩二郎を地に伏せさせてしまった。力を隠し、無力な町人を装って無難に彼の治療を終えて帰せば、彼はこの小さな庵のことなどすぐに忘れてしまっただろうに、この状況では余計に警戒させただけになっただろう。
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