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第351話

 父に代わって店番をしつつ、いつも通り手伝いに来てくれた湊と雑談していた蒼は、聞きなれた足音に顔を上げた。今日はいっぱい買い物をする予定なのだろうか、雪也が使っている籠を手に持って、周が小走りに近づいてくる。その姿に蒼はふわりと笑みを浮かべた。 「周いらっしゃ~い。忙しくてあんまり顔を出せてないけど、皆元気?」  本当は雪也から事情を説明され、庵に近づかないようにしているのだが、それを他人に知られぬよう小さな嘘をつく。周はそれを理解しているから、特に何を言うでもなくコクンと頷いた。 「そっか~。今日は何作るの? 白菜とか立派なのがあるよ~。由弦はいっぱい食べるし、鍋とかどう?」  当たり障りのない、ありふれた商売文句。それを頷いて聞きながら、周は白菜を受け取る瞬間に蒼の袖へ紙片を滑り込ませた。蒼も表情ひとつ変えることなくそれを受け取り、自然な動きで帯の内側に挟み込む。

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