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第354話

「まぁ、無理なんじゃないかな~」 「告白しても?」 「うん。だって周が告白したって、雪ちゃんは受け入れないし~」 「……なんで? 雪也だって、周のこと大事に思ってるし。それに、雪也の性格なら、ちゃんと向き合って考えるんじゃ……」  雪也が人の真剣な想いを軽く扱うとは思えない。だが蒼はふっ、と吐息だけで哂った。 「雪ちゃんには無理だよ。だって雪ちゃん、すっごい馬鹿だから」  いつもニコニコと微笑み、柔らかで優しい雰囲気を纏う蒼が、ゾクリと背筋を震わせるような笑みを浮かべ言い切る。その微笑みに湊の背筋がゾワリと震えた。 「あぁ、頭の問題じゃないよ? 頭悪かったら薬売りなんて絶対できないし。頭の良し悪しなら、雪ちゃんは極上なんじゃない? 僕も商売上、色んな人を見てきたけど、あんなに物覚えが良くて、その知識を自分のモノにできてる人なんてそうそういなかったからね。でも、雪ちゃんは馬鹿だよ。もしかしたら、そこらにいる十にも満たない子供よりも、うんと馬鹿」

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