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第358話

「だから、湊も不必要に自分を下に置いちゃ駄目だよ。行きつく先なんて、今の雪ちゃんと同じ、都合の良い存在として利用されるだけなんだから」  ネギを並べながら、スッ、と蒼が視線を向ける。その澄んだ茶色の瞳に、湊は思わずピクリと肩を震わせた。 「下に置いてるつもりはないんだけど、俺は利用されてる?」 「少なくとも僕の目には湊も他の人も湊自身を意識的にしろ無意識的にしろ下に置いてると思うし、湊に対して何をしても許されるっていう空気は感じるよ。もちろん、雪ちゃんも湊と同じだけど」  雪也は男に囲われ春をひさいでいたという過去から、湊は黒目黒髪の中では目立つ金髪碧眼ゆえに、人々から冷たい視線を向けられることが当たり前のように感じている。罵られたって仕方がないと、諦めてしまっている。けれど蒼から言わせれば、それこそが苦しみの根源なのだ。

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