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第385話

「で、まぁ、ここからが僕としては本題なんだけど」  声を潜めて告げられたそれに、雪也は静かに頷く。父親の話が効いたのか、今はどこにも人の気配は感じない。危険もないだろう。 「壊れるまで、今のままでいるの?」  問いかけられたそれに、雪也は静かに瞼を閉じる。ちょうど今考えていたことを口にされて少し動揺するが、それを顔に出すことはしなかった。できなかったと、言っても良い。 「本当はね、お節介だってわかってるんだ。この庵に住んでるのは雪ちゃんと周と由弦とサクラちゃんだし。僕は遊びに来るだけの、いわばお客さん? みたいな感じだからね。口を出す権利がない事も、わかってるんだ」 「そんなこと無いよ」  余計な口出しをしていると言う蒼に、雪也はゆっくり首を横に振る。確かに共に住んではいないが、蒼や湊は既に家族のようなものだ。今の庵の状態に物申したい気持ちもわかる。なにより、表に出ているフワフワとしたものが本質ではないことなど、流石にこれほど長く深く付き合っていれば雪也にも理解できる。 「蒼が僕たちを想って心配してくれていることは、ちゃんとわかってる。僕も、今のままで良いとは思わない」  けれど……、と続く言葉は無かった。サワサワと風が薬草を撫でる音だけが、静かな空間に小さく響く。

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