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第386話
「……これは僕の独り言なんだけどさ」
揺れる葉を見つめながら、ポツリと蒼が呟く。すべてが薬草で彩など何もない、味気ない庭であるが、蒼はこの庭をけっこう気に入っていた。
「他人の人生を雪ちゃんが一人で背負って、雪ちゃん自身とか、大切な人とかを犠牲にしてまで全部を救い出す必要は、無いんじゃないかな、って」
本来、雪也がするべきはこの薬草を使って薬を作り、銭と引き換えに渡すことであって、医者のように治療を施したり、無償で衣食住と治療を与えることではない。
医者であっても救えない命があるというのに、ただ見捨てることのできなかっただけの薬売りに救えない命があるのは当たり前のことで、必死に治療を施したことに感謝されこそすれ、責められる必要はないと蒼は思うのだ。浩二郎にしても、本人にその自覚があるかは知らないが、蒼から見れば雪也を都合よく扱っているようにしか見えない。だがそれは、雪也達が沢山のものを我慢してまでしなければならないことだろうか? こんなことで雪也が悩むことすら、蒼にすれば理不尽のよう思えてならない。
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