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第387話
「……弥生様は、雪ちゃんにどう教えたのかよくわかんないし、知らないけれど、でも……、僕は――僕は、優しくあるためには、強くならなくちゃいけないと、そう思うんだよね」
優しさと、弱さは違う。
「……強く?」
ポツリと零されたそれに、蒼はようやく雪也に視線を向けた。まるで親を見失った迷子の幼子のように視線を彷徨わせていることに、雪也は気づいているのだろうか?
「うん。非情って言葉はあんまり好きじゃないし、ちょっと違うと思うけど、でも、そうだね。優しくあるためには、少し、非情になる必要もあると僕は思うんだ」
やっぱりちょっと、非情って言葉は嫌いだな、と蒼は苦笑する。
「例えばね、例えば、僕のお店にお野菜が百あるとするでしょ? 僕は商売人だから欲しいって言ってくれる人には全員に売りたいなって思うの。でもお野菜が百しかないのに、二百人がお店に来たら、百人にはごめんなさいって言うしかないでしょ? だってお野菜ないし」
まぁ、二百人も来てくれることないんだけどね~、とふざけたように言えば、雪也が思わずといったようにクスリと笑う。あぁ、久しぶりに見た。
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