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第400話
能力として劣っているわけではないが、それでも雪也には勝てない。先程告げた言葉にわからないと示した月路の姿を思い出す。彼は決して無能ではなく、むしろあらゆる面で秀でている。だからこそ紫呉も諜報を彼に任せるのだが、そんな月路でさえも雪也の胸の内を悟ることができなかったのは、彼が少なくとも世間一般並みには愛されて育てられたからか、それとも雪也が隠すことに慣れ過ぎているのか。
どちらにせよそれが指し示す事実は紫呉も、弥生も優も歓迎できるものではない。
「で? 月路は何と言っていた?」
衛府にとって必要な情報は、浩二郎のことを含め雪也の小さな紙片で事足りる。だが、それでは月路を行かせた意味がない。
雪也が決して語りたがらない庵の内情。何故かずっと居候を続けている浩二郎のことも含め、雪也達がどう過ごしているのか、危険は迫っていないかを探らせるための密偵だ。その報告をしろと促す弥生に、紫呉もまた少し視線を鋭くし、小さくため息をつく。
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