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第418話

「はい。随分とお騒がせしてしまったようで」  ごめんなさい、と謝る目の前の彼は見慣れた青年であるはずなのに、その声を聞くだけで男達の鼓動が激しく高鳴る。支えられて座っているその姿が、ひどく艶めかしく、憐れで。 「そ、そんなことはねぇよ。倒れるくらい体調が悪かったんだろ?」 「そうだよ。お、俺らのことは気にしないでくれ。具合が悪い時まで、そんなん気にする必要はねぇ」 「こんな時くらい、頼ってくれて良いんだ」  言葉だけを聞けば、純粋に雪也を心配するものであるが、声を震わせて視線を泳がせていては、そこに滲む欲を隠しきることはできない。まるで気に入りの遊女や好いた女子の機嫌を必死になって取ろうとしているかのようなその姿に、雪也は追い打ちをかけるようにして儚げに微笑んで見せた。 「ありがとうございます。そう言ってもらえると、随分助かります」  常は受け取ろうとしない助力の申し出を雪也が受けた。それほどまでに身体が辛いのだろうかと周や由弦は眉間に皺を寄せるが、男達は自分こそが雪也に頼ってもらえたのだと舞い上がり、ますます顔を赤らめて俯いたり、頬を掻いたりする。だが、その口元や目元の緩みは隠すことができなかった。

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