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第419話
「では、早速で申し訳ないんですが、しばらく薬を売る以外は休ませてもらっても良いですか? 薬を作るだけなら体調をみて休み休みできますが、治療や看病となると、そうもいきませんから」
薬を作ることは続けるという言葉に、知らず皆が安堵の吐息を零す。人間生きていれば体調を崩すこともあるし、足腰が痛くなることも、怪我をすることだってある。だが、近臣などを顧客としている城下町の医者や薬売りはそれゆえに高額な料金を請求し、城下町に近いこの町には医者や薬売りを名乗りはするものの腕の良くない者が三人ほどいるだけで、彼らも城下町に習っているのかそれなりの金額を提示してくる。弥生の庇護をうける雪也が安価で薬を売ってくれるからこそ、この町の者達は皆、病に倒れようと怪我をしようと薬に頼ることができるのだ。そのことにようやく気付き、男達も女将も勢いよく何度も頷いた。
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