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第444話

「馬鹿な子だ」  月路からの報告にそう零した弥生は深くため息をついて、月路に下がるよう手を振る。その動きに月路が頭を垂れ静かに退室したのを見て、弥生はこめかみを指で揉んだ。 「なんとなく自分を犠牲にするだろうとは思っていたが、まさかここまでするとは流石に想定外か」 「色を使うのは雪也にとって苦痛でしかないからな。流石に使わねぇだろうと思ってたが」 「容赦なく使ったみたいだね」  弥生のため息に苦笑しつつ、紫呉と優も小さくため息を零す。松中の屋敷で表情を無くすほどの苦しみを味わい、今なお松中の姿を見ただけで震える雪也が、まさかその色を使うなどとは思ってもみなかったが、弥生達の想像以上に雪也は雪也に対して無情であるらしい。 「で? どうするよ。浩二郎とやらは上手く追い出せたみてぇだけど、それで万事解決とはいかねぇみたいだぜ?」  雪也を想ってのことではあるが、周も由弦も怒りを露わにし、蒼は完全に雪也の行動を非難した。その気持ちはよくわかるが、雪也がそれを受け入れられるかどうかは、また別の話だろう。

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