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第445話
「仕方あるまい。周はまだ子供であるし、由弦や蒼は雪也とそう歳も変わらんのだから、雪也の感情にまで気を遣えというのは酷というものだろう。何より、雪也は少し脆いからな」
それは雪也が悪いわけでは決してないけれど。
「とりあえず、戻らないことには何も進まないだろうね。手紙という手もあるけど、今回は直接会いに行った方が良いだろうし」
誰にも頼ろうとしないのに、怖がりで、寂しがり屋な子だから。
「そうだな。この調子ならあと二日ほどで帰れるだろう。流石に城へは行かねばならんが、その後すぐに庵へ行くか。その浩二郎とやらがまだ近くにいるかもしれんからな、警戒するよう月路に伝えてくれ。我々も、少し変装して行くぞ」
雪也が徹底して弥生の存在を隠したというのに、弥生がそのままの姿で行っては雪也の努力が無駄になってしまう。それを理解している紫呉は弥生の命にひとつ頷き、部屋の外へ向かった。紫呉の姿が見えなくなった瞬間、優が弥生の肩に手を回し抱き寄せると、ゆっくり弥生の頭を己の膝の上に乗せる。
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