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第456話

 迫りくる軍勢を恐れれば恐れるほど、内通者と疑わしき者は遠ざけたいだろう。これから先は、今までよりもはるかに冷たい場所となって、静宮を苦しめるかもしれない。そして、そこにはもう守り抜いてくれた徳茂はいないのだ。 「嫁いできたとはいえ、私は主上の血の繋がった妹。朝廷側もすぐに弑そうとは思わないでしょう。それを逆手にとって、交渉の材料にしても構いません。朝廷や幕府がどう考えようと、私は上さんの妻となった時から幕府の人間ですから。朝廷が私を弑しても幕府を潰そうとするのなら、幸も不幸も私は幕府と共にするのみ。私はここにおります」  まるで愛しい人の胸に身を寄せるように、静宮は徳茂の眠る棺に頬を寄せた。 「ずっと、ここにおります」  静かに閉ざされた瞼に、静宮の頬が濡れる。その姿に弥生は深く頭を垂れた。

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