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第455話

「……上様は、宮様がお望みになるのであれば京に帰してさしあげよと仰せられましたが」  それは不要か、との声に出さない問いかけに、静宮は迷うことなく頷いた。そして思いをはせるように、美しい松の絵が描かれた襖を見上げる。その向こうに広がる青空を見るかのように。 「私に政は難しゅうてわかりませぬが、それでもこの国がめまぐるしいほどに動いていることは、わかっているつもりです」  それが幕府にとって良くない動きであることも、当然に。 「春風さんは、幕府に攻め込むんは長州や薩摩やと思うてはるかもしれませんが、その軍勢がどうであれ、この幕府に攻め込んでくるんは帝の軍となりましょう。薩摩の姫であった天盟院さんが幕府の敵と疑われたように、帝の妹たる私も、幕府からすれば危険な存在に映るやもしれません。そのような考えは持ちませんが、それでも疑われるんは、仕方のないことやと思うています」

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