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第482話
「傷を負った奴がいたから、どうにかできそうな雪也の所に連れて来ただけだろ? その時点で浩二郎って奴が住み着いちまうとか誰にも予想できなかったんだから、別に由弦がやった行動は褒められこそすれ、責める必要はねぇと思うけどな」
結果論でみれば、確かに始まりは由弦だったかもしれない。由弦が庵に連れてきさえしなければ、その後のことはすべて起こりえなかっただろう。だが、紫呉はそれを間違いだとは言えなかった。言ってしまえば、由弦の優しさを否定することになる。
傷ついた人を助けようとした。そのことに、褒められこそすれ、責められる点はない。
「けどッ――、けど、あいつは居続けたし、皆嫌な顔してたし、実際俺もあいつがいると居心地悪かった。早く出ていってほしいって。でも、だから雪也は薬を飲んで、独りで解決しようとして……」
雪也が自分を犠牲にしたことに関しては、今も納得してはいない。あんなことは二度として欲しくないし、本当は過去に戻って今回の事すらも消してしまいたいほどだ。けれど、何より悔しくてたまらないのが、結局雪也は全てのことにおいて由弦を頼ろうとはしてくれなかったことだった。
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