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第483話

「俺が悪いんだ。俺があいつを連れてきちまったんだし、槍の扱いもまだまだだから。だから雪也が独りで戦わなくちゃいけなくなった。俺が不甲斐ないだけなのに、紫呉を見た瞬間に思っちまったんだ。なんで……、なんであの時そばにいてくれなかったんだ、って」  本当はずっと自分の軽率な行いを後悔していた。何もできない自分が歯がゆかった。それでも、そんなことを言ってしまえば自分よりも落ち込んでいた周や湊が気を使って、その苦しみや葛藤をそっちのけで由弦を庇い、元気づけようとするとわかっていたから、何でもない風を装った。  過ぎ去った日々を無かったことにはできない。どれだけ由弦が後悔しようと時を巻き戻すことはできず、やり直すこともできない。今の由弦にできる事は、皆がそうしているのと同じように、かつての日常を取り戻すため平常を装うこと。だというのに、やって来た紫呉を見た瞬間に、奥へ押し込めたはずの感情が溢れ出てしまった。表情すら、取り繕うこともできないほどに。 「もしも紫呉がいたら、雪也はずぶ濡れで帰ってきた時、ちゃんと弱さを見せて泣くことができたのかなって。もしも紫呉がいたら、雪也は独りで戦わず、助けを求めることができたのかなって。薬なんて飲まなくてよくて、傷つけずに、良かったのかなって」

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