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第486話

 ふわりと風が吹き、葉が騒めく。交わった視線に言葉が出ないまま、由弦はボンヤリと近づいてくる紫呉の顔を見つめていた。そして唇が柔らかい何かに触れたと思った瞬間に、チュッ、と小さな音が響いて、大きな手が由弦の両頬を包み込む。 「頼る時は、俺を頼れよ。しばらくは俺も城下町にいるし、いなかったら文を出してくれ。そしたら、馬をとばして駆けつけるさ。な? だから、お前が頼る先は俺にしろ。俺はそれが嬉しくてたまらねぇんだから」  雪也とは別の意味で世間知らずな由弦は、この想いを正確に知ることができるだろうか。そんなことを考えながらも、紫呉はもう止まろうとは思わなかった。  もともと、深く考えたり待つのは苦手なのだ。相手は子供だからと、好意を無意識であろうが駄々洩れにさせている相手に、よくぞここまで耐えたものだと自分を称賛すらしたい。 「ぇ……、ぃま……」  何が起こったのかよくわからないのだろう、目を見開いてポカンと口を開ける姿は傍から見れば間抜けで隙だらけなのかもしれないが、紫呉にはそれが可愛くて仕方がない。

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