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第494話
「こんな光景を見てたら敏感になってしまうのも仕方ないよ。僕も迂闊に後ろから叩いてごめんね」
もっと気を遣うべきだったと謝る雪也に勢いよく首を横に振って否定しながら、チラと赤に塗れた籠に視線を向けた。
「雪也が謝ることじゃない。こんなに人がいたら、後ろからとか気にしてられないし。それより、俺も蒼もさっきここに来たから何もわからないんだけど、何があったかわかる? あそこに弥――」
「良いところで雪ちゃんに会えたね~。ね? 湊」
湊が弥生の名を出そうとした瞬間、蒼が慌てて湊の口を手で覆ってわざとに話しを逸らせた。何が何だかわからないが、蒼がそうするからには何か理由があるのだろうと、湊は話を合わせるようにコクコクと頷く。
「ここにいても警部所の役人の邪魔になってしまうだろうから、庵に行こう。僕も悲鳴を聞きつけて見に来ただけだから、周たちは庵に残ってもらってるし、早く帰ってあげないと」
おそらく雪也も先程蒼たちが危惧したように、弥生達に何かあったのではないかと不安になって駆け付けたのだろう。そして彼らの生存が確認された今、次はこの凄惨な光景に戦う術を持たない周たちを庵に残してきたことが心配でならないのだと察して、蒼と湊は雪也と共にその場を離れ、庵へ向かった。
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