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第502話
「戦というものは、そういうものだ。戦を起こす者の多くは安全な場所にいる。大将がいなければ戦士も烏合の衆になっちまうからな。全滅か、捕虜となって処刑される以外は死ぬこともねぇ。その代わりに、多くの無辜の民が死ぬ。何の罪もない民が犠牲になる。戦になれば、この町は悲鳴と叫び声と怨嗟、慟哭で満ちるだろうな」
グッと力を込めて槍を引き抜くと、貫かれていた懐紙を抜き取り、紫呉は懐に仕舞いこむ。そして静かに浩二郎を見た。
「お前らは衛府を倒したいんだろう。そのための虐殺なんだろう。だが、お前らの刀が切るのは衛府の者じゃなく、民になる。で、もう一度きくぞ。お前らは〝虐殺〟の果てに何を掴むんだ?」
彼らが欲しいのは明るい未来だ。現状を壊し、より良い未来をこの国にもたらす為に動いていることを紫呉は疑うことはない。彼らが己の信じる正義で動き、そのための犠牲を厭わないなど、彼らの口から聞くまでもなかった。だからこそ、紫呉は彼らに問いたい。彼らが厭わない犠牲とやらを背負うのは、誰であるかを知るのか、と。
だが、そんな紫呉の疑問も願いも、浩二郎には届かなかった。
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