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第509話

「じゃぁ、やっぱり……」  その後に続く言葉を探すよう視線を彷徨わせた蒼に、雪也は頷いた。 「〝尊皇〟」  ピクリと周の眉が跳ねる。町でもよく聞くようになった、その言葉。 「帝を敬い、帝を中心に政を行うという言葉だそうだよ。そして、その尊皇が彼らの合言葉のようなもので、志であるらしい。――帝を中心に政を、ということは、いま政を動かしている衛府を排除、あるいは消滅させようということに他ならない」  弥生も、弥生の生家である春風家も近臣だ。どう考えても衛府側の人間だろう。すぐにたどり着くことのできる考えに、皆が無意識のうちにコクリと息を呑む。 「今日は、卯領の大臣が暗殺されたみたいだった。近臣の屋敷が建ち並ぶ場所で、護衛もいたのに、護衛は一人残らず切り殺されて、大臣が乗った籠には刀が突き立てられていた。さすがに中を見たわけじゃないけれど、たぶん、想像通りだと思う」  そして、それは今回だけではない。この国のあちこちで今、同じような光景が広がっている。  今回は、卯領の大臣だった。だけど、明日は、明後日は、どうかもわからない。

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