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第510話
彼らがどこかの領主と繋がっているのならば、まだ望みはあったかもしれない。だが、衛府をよく思っていない領はいくつかあるものの、そのような話は聞かなかった。つまり、どれほど縁を繋いできた春風家であったとしても、否、そんな春風家であるからこそ、衛府の近臣である限り、明日の保証など僅かも無い。そんな弥生に付き従っている優や紫呉もまたしかりだ。
自分達を大切にしてくれる、親のような存在。由弦にいたっては愛する人の身が脅かされているとあって、皆が俯く。もはや食事どころではない彼らに、雪也は努めて明るい笑みを浮かべた。
「大丈夫、脅すような言い方になってしまったけど、でも、そう心配することは無いよ。当たり前だけど、僕が知っていることなんてあの人たちはとっくに知っているし、僕が考えつくようなことを予想できないはずもないんだから、ちゃんと対策はされていると思う。それに、あのお屋敷には多くの人がいるから、戦うのがあの人ひとりというわけではないし、智慧を出す人があの方たちだけでもない。だから、大丈夫だよ」
それは皆に言うと同時に、雪也が自らに言い聞かせているようでもあった。本当は誰よりも恐れ、春風の屋敷に駆けだしたいだろうに、自分がしっかりしなければと振る舞う雪也に蒼もいつものように微笑む。
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