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第523話
「確かに春風家は縁を多く結んでいます。なにせ縁づくりの化け物ですからね。ですが今はその縁が何よりも厄介です。味方になれば心強いというのは間違いありませんが、逆に敵となった時は最大の壁となりましょう。杜環殿の考えは甘すぎるし、春風家を信用しすぎなのです。彼らは将軍が信頼する近臣なのですよ!?」
できる事ならばいの一番に排除したいのが春風だと息巻く光明に、治まる気配のない頭痛が激しくなる。さてどうしようか、と杜環が思わず眉間に指をあてたとき、光明が苛立ちのままに立ち上がった。
「このままでは話が平行線ですから今日はお暇しますが、杜環殿もよく考えてください。変化を恐れて志ある若者を見捨てるのか、縁を捨てて万民の未来を守るのか」
きっと光明の目に杜環は分からず屋に見えたのだろう。光明の提案を受け入れる気が杜環にないのだから、それはあながち間違いではないのだが、さりとて何でも親戚の情で肯定するわけにはいかない。
怒りを抑えきれないのか、所作も足音も荒々しくしながら去る光明の背を無言で見つめる。今度こそ隠すことなく大きなため息をついた。
織戸築と峰藤があれば血気に逸る若者たちを御せる? 今でさえ杜環では光明一人御すことができないというのに、何をもってして彼らを御せるなどと確信を抱くことができるのか。まして春風家を排除したいなどと。
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