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第547話
いつから、と明確なことはわからないが、このところ弥生の姿を見かけない。そのことに気づいた浩二郎たちは隠しきれぬ焦りを抱いた。
あらゆるところに縁を結んできた春風家。当主は健在であるものの屋敷で過ごすことが多く、町で見かけずとも何ら不思議なことではないが、父の代わりに動く弥生を見かけないのはおかしい。
春風家当主も、弥生も、現将軍である芳次とはあまり気が合わないと聞く。だからこそ茂秋が身罷って以来、彼らは衛府から距離を取っているのだという噂は、この武衛に住む者ならば一度くらい聞いたことがあるだろう。そんな彼が不穏な世の中にあっても芳次のために動くなど考えづらいが、それでも胸に巣食う嫌な予感は拭えない。どうするべきかと逡巡するが、自分は仕官もしていないただの町民に過ぎないのだと自覚して、この志に理解を示し協力を申し出てくれた光明が住まう武衛の織戸築邸へと急いだ。
「春風 弥生が?」
汗を滴らせながら走って来た浩二郎は、すぐに顔見知りの門番によって中へ通され、光明の元へ連れられた。役所仕事などしたことのない浩二郎の報告は拙く、話があちこちに飛んでしまったが、それでも彼が危惧するところはちゃんと伝わったのだろう、光明は閉じた扇子を掌で遊ばせながら眉間に皺を寄せている。
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