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第546話

「……べつに、怒ってるわけじゃ……。でも、早く帰ってきてくれよ? まだぜんぜん槍の使い方も教えてもらってねぇし、早く紫呉みたいに使いこなせるようになりたいからさ」  寂しいから早く帰ってきて、なんて常は素直な由弦であっても恥ずかしくて言えない。だから子供が約束に縋るように、そう口にした。  早く帰ってくる。その応えが欲しいと強請る由弦を紫呉は片手で抱き寄せて、そのつむじに触れるだけの口づけを落とした。 「あぁ、すぐ帰ってくるさ。そしたら寄り道なんてせずに、まっすぐにこの庵に来る。約束するよ」  だからそう不安を抱いてくれるな。祈るようにクシャリと髪を撫でれば、ようやく由弦は「やめろぉぉぉ」と叫びながらも楽しそうに口を開けて笑った。そんな由弦にやれやれと言わんばかりに顔を振って、サクラが大きく欠伸を零す。  笑い声を聞きつけたのか、やって来ていた蒼と湊が顔を覗かせ、暫くお預けだからと槍の稽古をした。  そして、愛し子たちに何を言わぬまま、弥生たちは戦うために華都へ向かった。

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