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第545話

 サクラを腕に抱えながら、紫呉は庵の外で由弦と二人座っていた。世情が世情だけに、今は弥生の側を離れるわけにもいかないが、それでも出立する前に二人の時間が欲しいと願う紫呉の我儘であったが、はたして由弦はそれに気づいているのかどうなのか。 (サクラの方がわかってたりしてな)  腕の中で大人しく身を預けているサクラの頭を優しく撫でる。この柔らかな感触も、少しの間お別れかと思えば名残惜しい。 「しばらく居るって言ってたのに、また行くのか?」  行先さえも告げられず、ただ少し弥生の護衛で武衛を離れるとだけ言われた由弦は、それが紫呉の仕事だとわかっているのに、どこか恨みがましいというよりは拗ねたような声でポツリと呟いた。それに紫呉はクスリと笑い、サクラは耳をピクピクと震わせる。 「そう怒んなって。前みたいに長期にはならねぇって弥生も言ってたし、何か月もってことはねぇだろ」  むしろ長期になっては困るのだ。早くに結果を出して、戻ってこなければならない。

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