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第561話 ※

「見たところ食事は少しでも食べられたようですが、何か食べられないものでもありましたか? 喉が詰まったような感覚がしたり、呼吸が苦しいということはありますか?」  熱を測ろうと額に触れるが、異常を感じるほどの熱さではない。大男も雪也の言葉に首を振って否定した。 「ここは儂らが食事をする時によく使う店じゃ。当然、こやつも何度もこの店で食事をしておる。この膳も、初めて食べたわけではない。こやつも今まですべて食べきっておったが、このような事になったのは初めてじゃ」  だからこそわからないと言う老主に、顔を真っ青にしている店主が取れてしまうのではと心配になるほどに何度も首肯している。彼からすれば、ここで膳に毒が盛られていただの、食中毒だのと言われては店の存続、ひいては己の生死に関わるので必死なのだろう。 「あ、あの……、お水……」  大男が腹痛に唸った時、襖の向こうから女中たちが恐る恐る顔をのぞかせた。その手には雪也の言葉でどちらが必要だったのかわからなかったのだろう、桶に入れられた水と、幾つかの湯呑に入れられた水がある。こちらも疑われるのではと思っているのか、顔を真っ青にしている女中からそれらの水を受け取った兵衛が外に促した。 「すみません、ありがとうございます」  襖を閉めて水を手に近づいて来た兵衛に礼を言って、雪也は湯呑を掴むと大男の口元へ寄せた。

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