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第565話 ※
「その魚を朝に食べたとしたら、その日の夜か、あるいは翌日に症状が出ます。その……、自分の意思に反して、勝手にお尻から油が出てきてしまうのです」
常であれば便意を覚え、そして少しであれば自分の意思で我慢することもできるだろう。だが、これは我慢などできない。
「あ、油がですか?」
流石の兵衛も驚きが大きかったのか、無表情が崩れて目を見開いている。そんな彼に雪也は残酷にも頷いた。
「はい。勝手に出てきてしまうので、最初は気づかない人もいるのだとか。それくらい人間の意志で我慢することができないものです。そして、油が出てきてしまうということは、その他のものも、自然と出てしまうということで……。ただ出てしまう方もいれば、痛みを覚える方もいらっしゃるのだとか。もう一度言いますが、少量であれば問題はない魚です。今回は、十五切れ以上お食べになったので、問題が生じたのだと思います」
魚を持ってきた者はどうかわからないが、少なくともこの大男は知らなかったのだろう。食べてから時間も経っていたので、すぐにそれが原因であると思い浮かばなかったのも当然といったところか。
「そんな魚があったとは……」
ポツリと零したのは兵衛であったが、その場にいる皆の顔が驚きを通り越して呆然としていた。そんな彼らに、雪也はますます申し訳なさそうにヘニョリと眉尻を下げる。
「ただ……、その性質をもつ魚は一種類だけではないと聞いていますし、仮に何の魚か判別できたとしても、私の薬ではどうすることもできません。お役に立てず申し訳ないのですが……」
できるとすれば脱水に気をつけて水を飲み、安静にしてすべてが体外に排出されるのを待つくらいだ。油もその他も排出されるのは止められないのだから。
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