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第567話

「わざわざ来ていただいてすみませんでした、雪也さん。まさか魚が原因だったとは思わず……。今は医者を呼びに行かないといけないのですが、謝礼などは後ほど庵の方に届けに行く形で良いでしょうか。夕方には伺えるかと思うのですが」  確かに、雪也も紫呉から魚を貰わず、優から話を聞いていなければその結論にたどり着くことはできなかっただろう。やはりあまり知られていない魚なのだろうと思いながら、雪也は緩く首を横に振った。 「いえ、今回は薬をお渡ししてはいませんし、特に何もできていませんから謝礼を頂くわけには……。これから医者もよばれるようですし、お代はそちらに」  雪也は薬売りであって、医者ではない。今回はたまたま心当たりがあったのでそれを告げさせてもらったが、本来の雪也は薬を作って渡すだけが仕事なのだ。今回は薬を渡しておらず、特に何をしたわけでもない。大男は今なお止められぬ苦しみと戦っており、もしかすれば彼の家族も同じ状況に陥っているかもしれないのだ。雪也に打開策がない以上、お代はいらないと言うが、兵衛はそれでは駄目だと言い募った。 「たとえ薬をいただかなかったとしても、雪也さんの時間をもらいました。それに対しての報酬はお支払いしなければ」 〝金銭に情を入れては破滅するぞ?〟  初めて彼らと顔を合わせた時に、老主が告げた言葉が雪也の脳裏に蘇る。親子そろって厳しいほどに優しい。

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