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第610話

「ごめんね~、なんか暗くしちゃって。でもまぁ、本当はもしかしたらっていう心当たりがないわけじゃないんだよね。ただ確証がなくて、僕が、それが原因じゃなければ良いなって思ってるだけ」  もしもそれが原因なら、蒼は湊にとって一番傷つけてはならない部分を切りつけてしまったに等しくなるから。 「よくわかんねぇけど、もしも蒼が思い浮かべてるもんが原因だったとしても、湊は蒼を恨んだり怒ったりしねぇよ。だって、蒼自身が原因なら、蒼はもう後悔して改めて湊に謝って、二度と繰り返さねぇだろ? それなのにもしかしたらって思ったまま動けねぇってことは、蒼と関りがあるかもしれねえけど、蒼自身が何かやっちまったってわけじゃねぇってことだ。俺らにだってすぐにどうにかできないモノは山ほどあるんだし、蒼にそんなものは無いなんて、そんなことはねぇだろ? それくらい、湊はわかってるって。だから、蒼を責めたりしねぇんだよ」  特に寄り集まって家族となった庵の者達とは違い、蒼には血の繋がった家族がいるのだ。情もあるだろうし、息子という立場上好き勝手にできない部分もあるだろう。家族だから衝突することだってあるはずだ。

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