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第668話

「紫呉に諭される日がくるとは。よほど私は冷静でなかったらしい」  どこか硬質でつっけんどんな言い方ではあるが、それが弥生の照れ隠しだと知っている紫呉はふッ、と小さく笑う。 「俺だってたまにはモノを考えてんだよ」  普段は弥生と優がいるから使わないだけだ。そんなことを言う紫呉に弥生は視線を向けた。 「知っている。お前はお前が言うほど何も考えていないわけではないからな」  ゆっくりと瞬きをする。考えたのは、その一瞬だけだ。弥生は小さく唇を噛んでから、前を見つめた。 「だが、そうだな。今はここを無事に通ることに集中しよう。結果がどうなったとしても、すべてが終われば庵に行ける。あの子達にも会えるだろう」  弥生の言葉に紫呉は振り返らなかった。真っ直ぐ、ただただ続く道を見つめ続ける。 「ああ、そうだな。そのために俺は道を作ってやるよ。お前らが真っ直ぐに進めるように。それが俺の役目だからな」  言って、馬に添わせるようにして隠していた槍を手に取る。そして空を切り裂くように飛んできた矢を振り落とした。

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