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第676話 ※

「それもそうですね。あの時も、今も、あなたとは物騒な話しかしていない気がします。きっとそういう運命なのでしょう」  あぁ、そうだったな。と紫呉は小さく息をつく。そういえば、彼から〝バケモン〟の話を聞いたのだったか。 「そうか? 今はともかくとして、前回はそう物騒でもなかったがな。だが、そうだな。お前には感謝してるよ。あの時、俺に〝バケモン〟の話をしてくれたことはな」  その〝バケモン〟が宝物になるなど、あの時の紫呉は知らなかった。失って心が酷く凪ぐことも、また。 「おや、そうですか? どうやら、知らぬ間にあなたにとって有益なことを話していたらしい」 「あぁ、これ以上ないほどな。だから、礼に俺もお前に教えてやるよ。頭が良いだけの坊ちゃん」  ゆったりと構える光明に紫呉は笑みを見せる。グッと槍を握った瞬間、誰もの視界から紫呉の姿が消えた。 「ッッ――!!」  誰もが突然の事に息を呑む。紫呉を探そうと視線を彷徨わせる余裕もなく、異臭が鼻腔をくすぐった。これは、錆びた鉄の臭い。理解した瞬間に皆が振り返る。そこには槍の先を心臓にめり込ませた光明の姿があった。

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