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第681話 ※

(雪也、お前もこんな風に囲まれながら戦ったのか?)  庵に周を隠して、たった独りで。 (周は、ずっと雪也を待ってたんだろうな。あいつはずっと雪也の側にいる奴だから)  ずっと、雪也と一緒に逃げることを信じて。 (蒼は父親を追いかけたんだろうな。なんだかんだ言って、あいつは家族を愛してたから)  だから、きっと迷いなんて無かっただろう。 (あぁ、でも、湊は何も報告が無かったな。いつも蒼と一緒にいるもんだと思ってたが。喧嘩でもしたか?)  でも、無事でいてくれるならそれで良い。たとえたった一人であったとしても、刃から逃げて、逃げて、生き延びてほしい。 (なぁ、由弦)  なんで蒼と一緒に炎の中に入って行ったんだ? 蒼の父親は決してお前に優しかったわけじゃなかったのに。それをわからないほど、人の感情に鈍感ではなかったはずだ。 (でもお前は、何回やり直したって同じことするんだろうな。お前が友達を放っておけるなんて、思っちゃいねぇよ)  蒼が行くなら、お前も行くだろう。その心の中に、損得勘定なんてありやしない。それでも、サクラを安全な所に置いていくのは、なんとも由弦らしいと言えば良いのか。 (それでも。なぁ、由弦。生きていてほしかったと思う俺は冷たいか?)

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