758 / 981
第754話
「我々は補佐官で、我々の主は領主です。この変革の中で何を奪われることもなく力を持ち続けていられる。それでも我々や領主が春風殿に対して公にしてさしあげられることなど何一つとして存在しない。もっと言えば、帝でさえも春風殿を案じておられる。しかし帝でさえも公に春風殿を助けることはできません。何もないのです。帝として、領主として、補佐官として、するべきは春風殿を含む近臣からすべてを奪い、反乱の力を完膚なきまでに叩き潰すこと以外に存在しません。存在してはならない。そして補佐官でも何でもなく、一個人としての援助でさえ、春風殿から断られてしまえば叶いません。時が流れた今、それを我々は理解しなければならないのです」
どれほど悔しかろうと、納得できなかろうと、補佐官である以上受け入れなければならない。それが嫌ならば補佐官を辞して只人になるよりないが、それを春風は望まないだろう。
拳を握り、唇を噛んで俯く皆に杜環は視線を向ける。彼の拳もまた、血が滲むほど強く握られていた。
ともだちにシェアしよう!

