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第755話
「それを理解した上で、力を、智慧を貸してください。本当に我々ができることはもはや何も無いのか。秋森殿のことも気になりますし、弥生殿が言っていた〝大切な者達〟のことも気にかかります。どんな些細な事でも良い、情報を得られれば道は開かれるかもしれません」
ハッとしたように皆の顔が上がる。
まだ、やれることがあるのか?
誰よりも国に尽くし、誰よりも命を救い、誰よりも報われるべき人にしてあげられることが。
「私もあなた方と同じです。現状を良しとは、どうしても思えない。報われてほしいのだと弥生殿に直接告げたことさえある。けれどそれでは何も変わらないのです。ならば受け入れるしかない。受け入れて、そこから道を探すしかないのです。私は受け入れましょう。理解しましょう。けれど諦めることだけは、できません」
公の立場としてできる事は何も無い。けれど私として、手を差し伸べる道はまだあるはずだ。地位も富も、そして信頼していたであろう紫呉も失った彼らが、少しでも報われるように。
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