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第756話

「ただ、ご存知の通り私はそう多く動くことはできません。それでも、この身体が動く限りに力を尽くしましょう。ですからどうか、共に探してください。私たちの友に、報いる術を」  一人の想いで出来ることなどたかが知れている。だがここにいる者達が共に力を尽くせば、あるいは道が開けるかもしれない。ただ世の不条理を嘆き、現状に納得できないと血を吐くような叫びをあげるよりは希望がある。  春風当主は、弥生は、それを望まないかもしれない。だがどうしても何もしないではいられない。  為政者である以上、ある程度は人の心を捨てる必要もあるだろう。時に冷酷に対処しなければならない事とてある。だが春風家を想う心もまた、捨ててはならないもののように思えた。人の心を捨てる時があったとしても、為政者は永遠に人であらねばならないのだから。

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