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第764話

「周は蒼と由弦同様、刃に貫かれて亡くなったようだ。そして周を守っていたのだろう雪也は周や由弦、蒼の死を知って服毒死したと、卸問屋の兵衛殿が知らせてくれた。サクラを頼むと雪也が言ったようでな、私の独断で兵衛殿から預かった」  あぁ、と弥生は深く瞼を閉じる。  なんてことだろうか。 「庵を襲撃したのは尊皇の過激派だったようだ。雪也は殺すのを良しとはせず倒すにとどめていたようだが、彼らは殺そうとしてのことだ。当然ではあるが、雪也は全身に酷い傷を負っていたと兵衛殿が言っていた。あの時は希望に縋りつかんとしていたが、正直なところ服毒をしなかったとしても、助かったかは怪しいと」  きっと庵の中に周を隠して、雪也は必死に戦ったのだろう。誰かを、何かを守りながらの戦闘は容易ではない。そのうえ殺さずに配慮したとなれば尚更に、雪也にとっては辛く苦しい戦いだったに違いない。だというのに、その先に待ち受けた真実がこれほど残酷だったとは。

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