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第763話

「ぃ、たい……?」  父が紡いだ言葉の意味を、しばらく弥生は理解することができなかった。何度も何度も頭の中で反芻して、それでも信じられないとばかりに口から零れた声はひどく擦れていた。  いたい――遺体。 「様子を見ていた者に聞けば、巻き込まれただろう父親を助けるために蒼は自ら炎の中に入り、蒼を追って由弦もまた中に入ったそうだ。その時にサクラは置いていったため、こうして無事だったが」  そっと、無意識に弥生の手がサクラの頭を撫でる。いつだって由弦を追いかけていたサクラだ。この子が生きているということは、きっと由弦が外で待っているように言ったのだろう。そしてサクラは待って、待って、今でも待ち続けているのか。 「では、焼死、ということでしょうか」  認めたくはないが、知らなければならない。その思いだけで弥生は言葉を紡ぐが、父は更に残酷な現実を知らせるよう首を横に振った。 「いや、火傷はいくつかあったが、それが死因ではない。蒼も由弦も、傷があった。刀による、深い傷だ。火事の混乱に乗じて襲われたのだろう。そして、弥生。同じ時に庵も襲撃にあったようだ」  ざわりと、弥生の胸が奇妙に蠢く。  先に蒼と由弦の話をした。  サクラがここにいた。  庵も襲撃された。  父が何を言おうとしているのか、わからないほど愚鈍であれればよかったのに。

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