「たった一人の祈りなど叶うものかと、他人は嗤うかな。でも、それでも僕は祈るよ。いつか多くの人が当たり前のように平和を享受できますように。明日を、大切な人を奪われるかもしれないという恐怖に怯えることがないように。この世のありとあらゆる武器が、その役目を永遠に終えますように。紫呉が命をかけて守り、弥生が繋いでくれた意志が、絶えることなく未来へ受け継がれていきますように」 　あの必死に走った日々が、せめて未来への礎となりますように。 「嗤うものか。それは決して、嗤われるようなものではない。私も共に祈ろう。いつか――」 　誰もが笑える世界が良い。脅かされることなく、穏やかな毎日。子供たちは貴賤に関わらず学び舎に集い、多くを知り、考え、ああしたい、こうしたいと大いなる未来を語り、生まれながらに役目を決められるのでなく、身分に縛られるでなく、心のままに羽ばたいて。 　あの庵にあったささやかで温かい、陽だまりを。 　あの子達にあげたくて仕方が無かった未来を。 　離したくなかった手を。 　いつか――。