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第26話
「由弦?」
食べ進めることもせず卵焼きを咥えたまま固まった由弦を不思議に思ったのか、紫呉が首を傾げながら声をかける。それに大げさなほどピクンと身体を跳ねさせた由弦は慌てて卵焼きを食べると、ヘラリと笑った。その顔にもう一度紫呉は首を傾げる。
「どうかしたのか? 珍しく真剣な顔してたぞ」
ここに皺なんか寄せて、と紫呉は指でグリグリと由弦の眉間を撫でる。それにやめろーと叫びながら由弦は身を捩らせた。
「くすぐったいし! ってか珍しくって失礼な。俺だって真剣な顔になる時は山ほどッ……ちょっとくらいあるし」
勢いよく言ったものの、そんなにあったか? と自分で疑問に思った由弦はモソモソと言い訳のように続ける。その、なんとも正直な姿に紫呉たちはカラカラと笑った。
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