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第27話
「別にこれくらい嘘の内にも入らねぇのに。で? なに急に考え込んでたんだ? そのちょっとはある真剣な時がさっきだったんだろ?」
ポンポン、と宥めるように紫呉の手が由弦の頭を撫でる。その大きな手はいつだって由弦に安心をもたらし、きっとどんなことだって受け止めてくれるからと身を委ねるように何でも話してしまいたくなるが、さすがに紫呉と周が雪也をめぐって恋敵になり、今の関係が脆く崩れてしまうのではないかと相談することはできなかった。何よりこの場にはまったく何も気づいていない雪也がおり、まわりは何でもないふりを装って聞き耳を立てている者で囲まれている。つくづく雪也のようなモテ方は大変だと思わずにはいられない瞬間だ。
「どうでも良い事考えてただけだって。それより、やっぱり俺も一緒に帰る。家に忘れ物したの今さっき気づいたからさ」
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