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第53話

「由弦?」  どうしたのだろう、と雪也は由弦の顔を覗き込もうとした。しかしその瞬間、ガバリと由弦は勢いよく顔を上げ、雪也は思わずビクリと肩を震わせてしまう。 「雪也!」  先程まで蚊の鳴くような声だったというのに、突然大きな声で呼ばれて、雪也は思わず背筋を必要以上に伸ばした。真っ直ぐに由弦を見つめる。その視線を受け止めながら、由弦は何かを決心したように真面目な表情を向けた。 「雪也の好きなものって何だ?」 「…………は?」  それはまったく予想もしない問いかけだった。

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