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第76話

「雪也……」  言葉に表すこともできない、それどころか自分ですら明確に理解できていないゴチャゴチャとして複雑に絡まった思考に振り回され、けれどわからないなら流れに任せて自分は無視していれば良いじゃないかと思えば思うほど焦燥感にかられる。紫呉の、どこか寂しそうな顔が脳裏にチラついて、それは駄目なのだと叫びたくなる。  どうしたら良いかわからなくて、もう大学生だというのに迷子の子供のようだ。心細くて、怖くて、助けを求めるように雪也の膝に顔を埋める。まるで幼い子供が母親に泣いて縋っているかのようだ。同じ歳の雪也に何をしているのだろうと頭の片隅にある冷静な自分が批難するが、この温もりを、安らぎを知る身体は動こうとしない。 「雪也……、俺は……」  どうしてこんなにも胸がざわつくのか。どうしてこんなにも恐れているのか。何も知らないはずなのに、怖いことなど何もないはずなのに、どうしてこんなにも必死になって、こんなにも苦しんでいるのだろう。  答えが欲しくて、出口を見つけたくて、でも、わからなくて。  ゴチャゴチャとした思考さえも由弦を急き立て、責め続ける。

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